この記事はGwentChallenger#4のファイナリストであるAretuzaAndyWandおよびDamorquisの大会準備についての考察である。
Original:
https://teamaretuza.com/homepage/article/gwent-challenger-4-preparing-the-triangle-of-greed-qcDx
GwentMastersの大会に臨む際、準備と適切な戦略を選択することは非常に重要だ。対戦相手のラインアップを予測し、適切なメタ読みを行い、前回の大会のデッキやプレイヤーそれぞれのパフォーマンスから推測する。これらは次の大会に向けての準備の基礎となるものだ。大会のためのよい準備とは、強力な戦略を組み立てるだけでなく、テックチョイスのみならずゲームプランを適切に実行するためのプレイヤースキルを担保する適切な量の練習とテストを内包するものだ。
事前予想
何が上手く機能するかを理解するために、対戦相手がどのようなデッキを持ち込むかを知る必要があった。Andyと私は各々が何を持ち込んでくるかの予測から着手した。これまでのGwent Mastersシリーズがデッキチョイスを教えてくれる。
LpHanachan
リスクを嫌うプレイヤーとして知られ、先攻時にダゴンを使う傾向があり、Open #6では後攻時にフォルテストをプレイした。大剣と錬金を好み、最近ではショープスコイアで好成績を収めている。
Aethr3n
大会新顔は他の参加者よりもターゲティング戦略を使いたがるだろうと予測した。しかしAethr3nはChallenger予選を、ターゲティングされにくいクラフ古参兵、テンポカルヴェイト、フォルテストというミッドレンジ構成で勝ち上がっていた。彼のミッドレンジ構成は、前回のOpenにおいて捕食や大剣ターゲティング構成が失敗したことを受けてのものだったのではないだろうか。
Kolemoen
トッププレイヤーの1人であり、スキルに自信を持っているプレイヤーである。好みのデッキを大会の場でプレイし、勝利してきたプレイヤーでもある。フォルテストデッキの最高のプレイヤーであり、おそらくこれは持ち込むだろうと予測した。また、彼は以前に完全にターゲティングされているにも関わらずカウンターされるリスクを負いながらも捕食をよく持ち込むことでも知られている。
GameKingAT
前シーズンをクラフ古参兵を主にプレイし、Challenger予選には捕食を持ち込み、カウンターデッキすら打ち負かして勝ち上がってきた。兵士ニルフガードをよくプレイしていたが、Challengerの少し前にプロラダーで錬金に切り替えており、Challengerにも持ち込もうとしていることを示していた。
Tailbot
スペルスコイアをプロラダーや前回の大会で使用した数少ないプレイヤーで、予測の難しいプレイヤーである。Open#5では捕食を、Challenger#3ではノヴァスコイアをカウンターし、いずれも決勝まで進出している。かくして、Tailbotが何らかのターゲティングをしてくることはありそうなことであった。Tailbotについて知られていることと言えば、大剣を好むことであり、おそらく持ち込むだろうということが考えられた。
ProNeo3001
デッキビルディングで知られ、Tailbotと同様に予測が難しいプレイヤーである。錬金ではなく兵士を好むのはよく知られているところである。Open#6で、クラフ古参兵にシヒルを投入するというアイデアを初めて実行し結果を残し、またフォルテストがよく機能することを示している。好みによる3つのデッキというのは予測が容易なように感じるが、プロラダーの終わり頃には捕食カウンターデッキをプレイしており、捕食を持ち込むのを躊躇わせた。*1
追加条件を加味した予想
上記の点だけでも参加者について非常に多くの情報が明らかになっているが、嗜好は大会でのメタから独立して分析することはできない。我々の予測を確からしいものにするために、前回大会のアーキタイプの流行とプロラダーのデッキ人気を計算に入れる必要があった。
対戦相手のデッキ予想について、いくつかのアップデートが行われた。
- フォルテストの増加と、結果的にショープスコイアの減少
- クラフ古参兵の増加
- テンポカルヴェイトのようなデッキの出現
- コントロールの減少および捕食へのカウンターの減少
各プレイヤーが上記の4条件に基づき独自の嗜好とそれぞれの意思で大会構成をアップデートすると考えるならば、我々は各プレイヤーの最もありそうなデッキ構成のテーブルを作成できる。もちろん、この予想は我々の理解に基づくものであり、実際にいくつかの点で誤っていた。しかし、大会のメタは予想から大きく外れることはなく、コンクエスト形式では徹底的なカウンターにでも遭わない限り多少の予想誤りは致命傷にはならないため、このズレはあまり影響がなかったと言える。
分析を終えての我々の大会メタ予想が下記である。
フォルテストおよびクラフ古参兵の流行とそれらへの対抗策に乏しく容易に0-3する可能性があるという点で、我々はショープスコイアの持ち込みを予想しなかった。フォルテストはターゲティングしにくく、かつ最近のプロラダーで非常に強力であったので、多くのプレイヤーがこれを持ち込むだろうと予想した。クラフ古参兵についても同様で、やはりプロラダーでよい結果を収めており、またProNeoをOpen#6で決勝まで導いている。
弱点の特定
次に、我々は予想を踏まえて自問した。同様なパワーカーブや弱点を持ち、大きな被害なく一貫したカウンターをされうるデッキ構成とは?
フォルテスト、クラフ古参兵、ダゴンは捕食やハンドバフニルフといった、「大型デッキ」に対して苦戦する。フォルテストとクラフ古参兵の多さ、および対戦相手の1/3にダゴンが含まれていることに気づき、我々は大会でこのようなミッドレンジ構成にカウンターすることを決定した。ターゲティングされにくい無難なデッキを持ち込んだプレイヤーは我々のラインアップに苦戦するだろう。
この選択に至ったもう1つの点は、捕食が非常に有効に見えたことである。Open#6で優勝したKolemoenはブラケット上でカウンターデッキとは当たらず、これにより彼の捕食はカウンターデッキを持たないプレイヤーからは「BANマグネット」となり、ゲームから除外され続けた。しかし、我々は前回Openでのコントロール構成の失敗の影響が、同じリスクを取る者を萎縮させるのか、最終的に結果を出したKolemoenのリスク選好路線を強めるのかというところは断定できなかった。*2コントロール重視のアプローチの失敗が前回大会で結果を残せなかったことを受け、我々は異なる手法を取ることに決めたのだ。
ラインアップ構築
アドバンテージを得るための弱点分析を終え、次の質問はどういったデッキ構成が3つのターゲット – 遺言ダゴン、テメリアフォルテスト、クラフ古参兵 – に一貫して有利であるかというものだった。
ラインアップの1つ目のデッキはハンドバフニルフガードである。
フォルテスト(大幅有利なマッチアップ)の増加に伴い、ショープスコイア(マードローメの初期化を複数回行われるため厳しいマッチアップ)が減少しており、絶好の持ち込みタイミングであるように見えた。さらに、クラフ古参兵(これもまた有利マッチアップ)が大剣(かなり厳しいマッチアップ)よりも流行していた。
次に我々は捕食を持ち込むことを決めた。Kolemoenの結果と前回大会でのコントロール構成の失敗があるというだけでなく、現在見かけるミッドレンジデッキ全般に対して有利がつくからだ。捕食は再び「BANマグネット」になると予想し、実際にその通りとなった。ハンドバフニルフガードと同じくフォルテストにとって最悪のマッチアップであり、遺言ダゴンやクラフ古参兵といった、「ネッカー」を止める手段に乏しいデッキに対して同じように非常に有効なのだ。
しかしここに来て、捕食やハンドバフのように十分に基準を満たすデッキを見つけることが難しくなった。スコイア=テルは一般的にフォルテストに弱いため、我々の戦略にフィットしたデッキがないということに気がついた。ショープスコイアの大流行は対抗デッキとして強力なフォルテストデッキの増加を招いてしまったのだ。こういうわけで、我々はスコイアを諦め、他を探すことにした。
フォルテストに対抗するためにフォルテストを持ち込むというアイデアは奇妙で偽善的*3に感じられる。しかし結局我々はそうした。フォルテストミラー戦というのはかなりドローに依存することになり、そのリスクを受け入れる必要があった。我々のデッキ構成はフォルテストにカウンターするためだけに構成されているのではなく、様々な有利マッチアップを持っているという点で、そのリスクを受け入れる余裕があった。我々はテメリアパッケージ*4をデッキに組み込まず、独自のものを持ち込むことにし、準々決勝ではわずかなアドバンテージをもたらした。パッシブなバリューをもたらすためミラーにおいて強力な「レダニア騎士見習い」のようなカードを採用した。また、対戦相手の「レダニア騎士見習い」を「口輪」で魅了するのはロングラウンドで多くのポイントを生み出す。アーマー型のフォルテストリストは対ダゴンを戦いやすいものにした。さらに、このリストはアーマーによってシヒルのバリューを下げ、こちらはターン毎にポイントを生み出すという、クラフデッキに存在しないギミックにより、対クラフ古参兵におけるロングラウンドでの強みも持っていた。
遺言ダゴンとクラフ古参兵に勝てるデッキとして大剣は適した選択に見えた。しかし、TailbotはGameKingATにまさにそのマッチアップにおいてあわや2-0されるところであった。大剣を試したが、対フォルテストでは全く安定しないことがわかった。「ガレットのセルトカーク」、「ヴェダメカー」、「デスモルド」がエンジンのセットアップのカウンターであるため、先攻時に勝利するのが非常に困難なのだ。要するに、対フォルテスト先攻の大剣を信用できなかった。そういうわけで別のスケリッジのデッキが必要だった。様々なデッキを試したが、最終的にSwimとCrozyrがTeam AretuzaのパブリックDiscordで鯨波兵オラフデッキを提案してきたのだ。当初は懐疑的だったが、想定しているマッチアップで使用してみてその成果に驚かされた。このデッキはまさに我々が求めていたものである一方で大剣、錬金、コントロール、捕食に極端に弱いというものであった。捕食が多いことは予想していたが、BANしてしまえばよいだけなので、1つの不利マッチアップは問題なかった。フォルテスト、ダゴン、クラフとのマッチアップを練習し、十分な成果を得た。こうして我々の4デッキのラインアップが出揃った。仮想敵はいずれも継戦と大型ユニットへの対処に苦戦する。カウンターされなければ鯨波兵オラフデッキは圧倒的なバリューを叩き出す。予想を踏まえれば、このリスクを取ることは十分に妥当なものであったと言えるだろう。
練習
この時点でラインアップは固まり、戦略は明確化し、あとはよく準備してよいブラケットになることを祈るばかりだった。
準備段階の最初に我々は正しいプレイ順序や適切なパスタイミングを見つけ、そして計画通りにいかない場合にどのようにプレイするかということを理解するために特定のマッチアップを何度も行った。遺言ダゴン、フォルテスト、クラフ古参兵デッキとの練習を主に行った。これらは既に有利マッチアップであったが、だからこそこのマッチアップでゲームを落とすことを避けたかった。古参兵VS鯨波兵での「トリス:年術師」による「アドレナリン分泌」返しや、対フォルテストでの早期パスがエンジン数や天候によるリスクを孕むという点などの勝ち筋・負け筋というものを洗い出していった。
予想したマッチアップでの十分な自信が得られてからは、大会形式の練習を行うことにし、BO5を10回、 Adzikov, Freddybabes, MrMax71, Octopuses, kacper322, Santtu2xといった、結果を残している有名プレイヤーと行った。異なるタイプのプレイヤーと対戦することはデッキ構成の自信を深め、様々な状況に対応する経験は本番での不安を低減させた。先攻後攻のどちらでも自信を持ってプレイするため、練習ではいずれも先攻でプレイした。最終的に我々は結果に満足し、リストを提出したのだ。
調整
AndyWandと私は同じデッキを使用することに決めていたが、最終的に私は2枚のカードを変更することにした。1つ目の理由は、我々2人と対戦する相手が、2人は同じデッキだと予想してその結果ミスプレイをする可能性があることである。2つ目に、「アルズールの複十字」のテンポよりも「最後の願い」で「ジギスムント・ディクストラ」を引ける可能性を増やすことや、「おとり」による「アン・クライトの鯨波兵」ブースト回数または「世界王者トロール」の除去回数を増やすのが強力だと考えたためである。好みの問題というレベルではあるが、結果的にAndyのリストは対Tailbotで有効に働き、私のリストは対Kolemoenを少し難しくした一方で、決勝では私に利をもたらした。
トーナメントツリー
プレイヤーの大半が自身の嗜好からかけ離れず、また実験的であったり見慣れないデッキを持ち込むことがなかったため、正しく予想できたデッキの量はかなり多かった。
次に示す表は準備段階で正しく予想できたデッキをハイライトしている。色のついていないものは予想と異なるもので、色のついているものは正しく予想できたものだ。*5
表を見ると、分析が成果を挙げており、少なくとも部分的には大会メタを予想できていることがわかる。
フォルテスト、遺言ダゴン、クラフ古参兵をターゲティングする戦略がどれほどの効果があったのか?有利マッチアップをハイライトした次の表で回答できる。
以下の表でハイライトされているのは我々の持ちこんだラインアップに対して苦戦するデッキで、我々としては4デッキのうちどれでも勝てそうなものだ。
我々がターゲティングしたデッキのうちから3つまたは4つが対戦相手のリストに入っていれば最高で、2つでも問題なし、1つだと厳しい。特に我々のデッキはフォルテストに対して最強の構成なので、その1つがフォルテスト以外である場合は少し難しいものになる。そして思い出してほしいのは、好ましくないデッキについてはBANできるということだ。
上記のデッキ構成を見て、以下のようなシナリオが想定された。
・VS Aethr3n, LpHanachan:楽勝
・VS Tailbot, GamekingAT, ProNeo3001, Kolemoen:問題なし
このデッキ分布はトーナメントツリーにおいて素晴らしいものだった。ラインアップは理想的であり、AndyWandの対Tailbot 3-0や私の対LpHanachan 3-0等、我々のデッキの特徴である大型ユニットへの回答がごく僅かまたは全く存在しない対戦相手とのゲームにおいて支配的とも言える勝利をもたらした。
BAN戦略
最後のセクションとして、我々のラインアップのBAN戦略を見ていこう。記事の冒頭でも言及したように、コントロールデッキや「ゲラルト:イグニ」、「マンドラゴラ」、「焦土」、「シーヒル」等の大型ユニットへの回答を積んだデッキに勝つのは難しい。フォルテストの増加によりショープスコイアを持ち込みづらくなっているのは追い風であったが、依然として好ましくないマッチアップは存在する。表をもう一度見てみよう。ハイライトされているのは好ましくないマッチアップだ。
好ましくないマッチアップも一部は緩和できる。*6特に2つ以上の危険なデッキを持ち込んだプレイヤーはおらず、1つは必ずBANできる。Kolemoenと私との準決勝において、他の試合のように捕食をBANしなかったことに驚いた方も多いだろう。私はBAN対象に錬金を選んだ。錬金と捕食は等しく危険なデッキであり、BANしなかったものを私の後攻フォルテストに当ててくるだろうと予想したからだ。*7従って、大会を通じてこの時だけは捕食を通すことにした。捕食は錬金より僅かに安定感に欠け、「ネッカー」や「ネッカーウォリアー」を引けずに負ける可能性もあった。
私のフォルテストデッキの「口輪」は「ネッカー」へのアクセス手段が1つしかなかった場合に勝利への可能性となり、運良く「ウィッチハンター」を引いて初期化が決まれば苦しい状況に追い込むことができる。ただ、不幸なことにこれらのカードを引くことはできず、完敗してしまった。
しかし、これは起こりうるシナリオであり、先にも述べたように、1つの好ましくないマッチアップと2つの有利マッチアップはマッチ全体を通してみれば勝利の可能性がある。フォルテストで錬金を相手にしていた場合、「蛇流派ウィッチャー」が即座に「レダニア騎士見習い」を片付け、「アシーレ・ヴァル・アナヒッド」がドローを難しくするという点で、捕食よりも戦いやすかったとは言えないだろう。
通常のBAN戦略としては、コントロール的能力のあるニルフガード、こちらのコントロール力不足により捕食、エンジンに干渉できずにこちらのデッキにすら勝ててしまう大剣となる。
謝辞
割愛
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翻訳後記
TeamAretuzaがいかに組織的に大会向けの作戦を練って見事にヒットさせたかという裏話。大会向けの構築論として有益であり、単純な読み物としても面白い。
誰もが意表を突かれた構成だったが、やっつけで博打デッキを持ち込んだのではなく、綿密な予想と準備に基づくものであり、驚くほど完璧な成果を出した。フォルテストの採用だけやや謎だったが、ミラーを意識した構成だったようだ。毒をもって毒を制すということか。
この手の話は鮮度が命と思い、かなり急ぎ足で翻訳したため、表現がわかりづらかったり棒訳感のあるところはご容赦いただきたい。Damorquisも英語ネイティブじゃないし、若干クセがあるんよ…
ホームカミング前最後の公式大会も終了し、そのホームカミングも映像がとうとう公開された。10月のカットオーバーを楽しみに待つばかり。